さて、デパート・ショッピングセンターの類に行っても、男性向けの売り場は少ないことは、前々項で述べた。

その点を見る限り、女性の消費生活のほうが、豊かで充実しているのは明白だった。

でははたして、男性は何も消費せずに、何の楽しみもなく日々を過ごすのか。本当に男性は、経済社会の中でモノを生産する仕事に専念するのみなのか。

…となると、それはちょっと肯定し難い。

男性が楽しみに消費するものが、やはり何かあるはずだ。

前項のパソコン・電気関係などは、そのひとつの答えかもしれない。

また自動車、釣り、ギャンブル類、それにゴルフなども、おおむね男性的な趣味と言って差し支えないだろう。

特にゴルフは、会社の接待などと結びつき、組織的に男性の文化たらしめられているので、タチが悪い。

男、かつサラリーマンたるもの、ゴルフが好きで当然だという、会社社会を牛耳る連中による決めつけがそこにはある。

中にはゴルフが嫌いな人もいるだろうに、ともかくゴルフに誘えばみんな喜ぶだろうと言わんばかりの発想の貧しさには、あきれるほかはない。

ゴルフというスポーツに対する冒涜でもある。

もっとも、ゴルフに限らず、接待全般について、ないしは会社内での「つきあい」も含めて、私のように真剣に嫌だと感じていた人は、やはり少数派かもしれない。

でなければ、夜な夜なの接待や「つきあい」が、あんなにさかんになるはずはないのだ。

多くの一般的な男性は、接待や「つきあい」で、ゴルフをしたり、飲みに行ったりするのが、じつは本当に楽しいから、それも家族と過ごしたりするよりもより楽しいと思うからこそ、そうするのではないだろうか。

「これも仕事のうちだからしかたがない」というのは、方便に過ぎない。

そうして、女性や、家庭を大切にしたい男性や、その他トランスジェンダーも含めて諸々の少数者の立場を切り捨てて、ひとり「多くの一般的な男性」にとってだけ都合のよい論理で動いているのが、まさに現代日本の会社社会なのである。

そしてそうなると、ゴルフはともかく、夜の接待・つきあいの内容が、必然的に「多くの一般的な男性」の好みに偏向していくのは、想像に難くない。

じつはここからが本題で、これで少しそれていた話も元に戻るのだが、結局、“男性が消費するモノ”、これを象徴的に集約するなら、つまるところ『女』ということになっていくのではないだろうか。

ちょっとしたスナックに飲みに行っても、当然のようにホステスさんがいる。

私は、そういうところでホステスさんとありきたりの会話をしても、ちっとも楽しくなかったのだが、私をそこへ無理やり連れていく方々は、ズバリ、そういうふうにホステスさんとお話するのが目的である様子であった。

さらにキャバレーなど、店の種類を変えれば、その“サービス”も段階的にエスカレートする。

最終的には、もっと直接的な“サービス”内容を持つ風俗店も待っている。

これらは、なにも夜に限らない。

じつは近所にキャバレーがあるのだが、ときどき「いらっしゃいませー」などの声も聞こえてくる様子から推測すると、この不況にもかかわらず、真っ昼間から大繁盛しているようだ。

郵便受けには、自宅出張風俗のピンクチラシもまた、毎日のようにごっそりと入っている。自宅に見ず知らずの他人を、それも怪しげな業者を介して呼ぶなど、非常にキケンなのではないかと、私なぞは思うのだが、それでもこうして、チラシが入り続けているのは、やはり少なからぬ男性が、現に“オーダー”をしているからなのだろう。

ようするに多くの一般的な男性の最大の楽しみはコレであり、こうしたサービスこそが、彼らが重点的に消費する商品なのだ。

直接的な意味でも、比喩的な意味でも、まさに男性の“買い物”は『女』。女性の「性」が、商品として消費され、男性が稼いだカネは、そこへ落ちていたわけである。

これで文脈上は、男性の消費生活も、じつは豊かなものであることが判明してめでたいということになるかもしれない。

むろん他人の趣味に対してとやかく言いたくはないし、さらに断っておくと、私も女の子は好きなので(^｡^)、男性が女性を求める心情そのものを否定するつもりはない。

例えば、Ｈな本やビデオ。これらを用いておこなうオナニーは、あくまでも代償行為であり、そこには本人によるさまざまな想像が入り込む余地があり、きわめてメンタルなものだと言える。

さらに『援助交際』。むろん倫理的に問題が皆無ではないが、さりとてこれは、テレクラなどを介して知り合った男女が、多少なりとも互いに憎からず思い、相互に納得して人間関係を持つわけである。たとえ金銭的な“援助”の収受がひとつの大きな柱として介在してはいても、両者の信頼関係が重要な意義を持つ、非常に血の通った、ウェットな、ある意味では面倒なくらい気も使う、まさしく“交際”である。

しかし、それにひきかえ、キャバレーなどをはじめ各種風俗営業のお店の女性は商品であるから、もっとドライに割り切った関係しか持てない。

女性側も仕事だから、いやな客でも無下には扱えない。

そこには人間どうしとしての関係はなく、単に客とサービス提供者の間の、契約に基づく、支配・被支配の構図があるのみだ。

しょせん、女性をモノとして購入しているわけで、非常に希薄なつながりである。

結局は女性の表層のみを、物理的な要素を中心にやりとりしているに過ぎない。

しかも対価として支払ったお金すら、当の女の子には行かずに、お店の経営者に大量に中間搾取されてしまう。

はたして、それで楽しいのだろうか。

楽しいという人は、「女なら誰でもいい」「重要なのは女の身体」「女は男に奉仕するもの」という価値観に、どっぷりと漬かっているのだろう。

つまるところ風俗店に喜んで通う男性は、女性との心のつながり・交流を忘れているように思えてならない。

そしてそれが、世の中一般での、さまざまな男女の関係をも、不幸なものにしているのは言うまでもない。